【錨草】
— あらすじ
探索者は、外出した帰り道でストーカー(NPC)が召喚した神話生物に誘拐されてしまう。
体の自由を奪われ、監禁されている事実を突きつけられた貴方だが、何とかストーカーの家から出ようと奔走する。
だが、ストーカーに監禁されたのも、脱出に向けて動くのも、全て、邪神の思惑通りなのであった——
— シナリオ傾向
現代日本クローズド。ダイスの出目によっては、SAN値が大幅に下がる可能性がある
— 所要時間
2~3時間(ボイセ) 4~6時間(テキセ)
※あくまでも目安です。選択によっては、1時間早まったりします
— 難易度
PL難易度:★★★☆☆
KP難易度:★★★☆☆
— PL人数
1人
— 推奨技能
必須:目星 聞き耳 探索する勇気
あったらスムーズに進む:リアル知識
状況によっては必要:咄嗟の判断力
— 諸注意
選択によっては、後遺症によるステータス減少を負う可能性があります。
後味悪い表現及び、胸糞悪い表現が含まれています。
またシナリオ上、今後貴方に被害が及んでも、おかしくないような表現が含まれています。
中には、実際に受けていた過去があり、心に傷を負っている方がいるかもしれません。
苦手な方、あるいはそういった関係でのトラウマをお持ちの方は、プラウザバックをお願い致します。
— シナリオ背景
探索者を監禁したNPCは、かつて全うな生活を送っている一般人だった。
何かしら探索者との面識を持ち、恋心を抱いている時に、
化身として人間に化けている、千の容貌——ニャルラトホテプの余計な後押しによって、
純粋だった恋心が歪んでいき、次第に探索者を見守る形でストーカーするようになる。
そしてニャルラトホテプから、アルスカリの召喚方法を教わったNPCは、
アルスカリを召喚して、探索者をNPCの家まで連れて行く。
だが本当は、ニャルラトホテプの口八丁で、他の人が唱えても何も起こらない。
そんな事を知らないままNPCは、教わった召喚方法もどきを唱え、
ニャルラトホテプはタイミングを合わせて、自らの手で召喚し、探索者を監禁する。
ただ監禁されるだけはつまらないので、脱出できるようにするための手掛かりなどを散らばらせ、
ストーカーの家の空間をいじって、地下室を繋いだりする。ノイズの走る音がしたのは、このため。
探索しているのを遠くから見て、ギミックを発動しては愉悦する、ニャルラトホテプだった。
NPCも探索者も、ニャルラトホテプの手の平に転がされていたのだ。
— 神話生物の解説
アルスカリ
ニャルラトホテプを崇拝している、一つ目の怪物。
姿は人間と似ているが、灰色がかった肌をしている。
NPCに探索者を誘拐させるために、ニャルラトホテプが召喚した。
探索者お持ち帰り要員。
ショゴス
玉虫色の大きな塊をした怪物。地下室の小部屋に閉じ込められている。
探索者が煽っても、ショーウィンドウのガラスで閉じ込められているため、
襲う事はあまりない。ファンブルイベント要員。
原ショゴス
人間の肉片のような塊。ショゴスとは別存在。
今シナリオでは、ニャルラトホテプの手によって創られた。
探索者を見つけると、襲いかかる。ストーカーの家を出るまで、追いかけ続ける。追い出し要員。
— 導入
探索者は、学生かもしれないし、社会人かもしれない。どちらにせよ、貴方は外出の帰り途中、足音を耳にする。
<聞き耳>を振らせて、足音の存在を気付かせてもいいし、そのまま伝えるのも、KPの裁量に任せる。
足音に不思議に思う人もいれば、恐怖を感じる人もいる事だろう。しかも、その足音に聞き覚えがある。
<アイデア>に成功したら、その足音は以前から背後から聞こえていて、止んだ時期はあったが、
最近またその足音を聞くようになった。つまり、ストーカーの被害に遭っているのではないかと伝える。
PLがこれに気付いていたら、振らせる必要はない。
探索者の後をつける足音は、今も続いている。
これに探索者は背後を振り向くか、はたまた走って距離を取るとった行動を起こすかもしれない。
だが、どの行動を取るにせよ、探索者は神話生物の姿を目の当たりにする。
以下のパターンを元に、KPは誘導をかける。
記載されたもの以外に、KPが思いついたもので、誘導をかけてもよい。
<背後を振り向いた場合>
振り向いた場合、街灯に照らされた影から覗いている灰色の肌をした、一つ目の怪物を目にする。
<走って距離を取る場合>
走っているその先の街灯に照らされた影から覗いている灰色の肌をした、一つ目の怪物を目にする。
<曲がり角を曲がって様子を見る場合>
曲がり角の先に、灰色の肌をした一つ目の怪物とぶつかり、目が合う。
——描写例
街灯の影から、体がずんぐりとした人影が貴方の視界に入る。
だがよく見ると、灰色の肌をしており、何より貴方は、人影の顔から目が離せなくなった。
その顔には、本来あるべき鼻や口などのパーツがなく、黒く輝く目が、一つしかないのだ。
その大きく見開いている目は、恐怖に張り付いた貴方の姿を、鏡のように映していた——
灰色の一つ目の怪物——アルスカリ(マレモンP.19)を見てしまった探索者は、0/1d6のSANcを受ける。
アルスカリの目による催眠効果で、探索者は意識を失い、その場で倒れてしまう。
マレモンに記載されている<凝視による催眠効果>で1d6の正気ポイントを減らさせても構わない。
これはKPの裁量に任せる。
意識を失った探索者が目を覚ますと、知らない誰かの一室にいる事に気付く。
だが、ベッドの上で手足を荒縄で拘束されていて、自由を奪われている。
これに加えて探索者は、GPSが搭載されたチョーカーを付けられているのだが、
この時点で探索者が気付く由がないため、KPはまだこの情報を教えてはならない。
KPの裁量で、猿轡や鎖付き首輪、目隠しなどを探索者に付ける。
あるいは、ベッドの上でなく、床に寝かせたり、壁に固定させるといった拘束方法を変えてもよい。
だがPLによっては不快に思う方がいるため、そうしたいのであれば、
あらかじめそういった表現が含まれると警告しておく。
PLが大丈夫であれば、拘束方法をアブノーマルにしたりすると、もっとシナリオを楽しめるかもしれない。
探索者が拘束されているのを理解すると、開かれたドアからNPCが現れる。
このNPCは味方ではなく、探索者を誘拐したストーカー。
ストーカーと探索者の間に、何らかの関係を持たせてもよい(例 友人、幼馴染、親戚...etc.)。
NPCは、探索者の事を愛してやまないので、「今日からここで一緒に暮らそう」「もう離さない」
「やっと貴方に触れられる」「ずっと大事にするよ」などといった一方的な愛情表現をして、
探索者にNPCの異常性を理解させる。どんな愛情表現を示すかは、KPのお好み。
指で絡めるように髪を撫でる。頬や額、首筋などといった箇所に口付けをするといった行動を起こすと、尚よい。
探索者にヤンデレの恐ろしさを伝えるのが、最も重要である。
そういった事をする中で、探索者から「後をつけていたのは君か?」「こんな事をして、一体何が目的だ?」
などといった質問が飛び交うかもしれない。
中には、自分の置かれている状況を理解した探索者が、NPCを貶すような発言をするのかもしれない。
ちゃんと答えてあげるもよし、はぐらかすもよし。
歪んだ愛情表現をひとしきりした後に、「夕飯の買い出しに行かなきゃ」など適当な口実で、NPCを外出させる。
探索者が引き留めようと声をかけても、無視して外出し、1人にする。
— 拘束状態からの解放
ここから、探索者は行動を取る事ができるが、まずは拘束を解かないと身動きが取れない。
なので、近くにカッターナイフが落ちていると誘導をかける。
ベッドの上で拘束されているのであれば、サイドテーブルの引き出しの中を調べさせて、取らせるもよし。
床に寝かされているのであれば、芋虫状態で探索して、見つけさせるもよし。
いずれにせよ、拘束状態から解放するようにKPが誘導をかける必要がある。
最低限の動きが出来ている状態で、探索者がまだ拘束した状態で動きたい場合は、
拘束状態を解く術を見つけさせてから、様子を見ても構わない。
— 探索
拘束具を外したら、探索者は本格的に辺りを調べるかもしれない。
この時KPは、探索者の持ち物(髪留めなど、身に着けているものは除く)がない状態だとPLに伝える。
勿論室内にいるため、先程まで履いていた靴は脱がされた状態。
つまり現在の探索者の足元は、靴下を履いている状態、または裸足の状態となる。
家の中を探索している時に、間取りがマンションの一室だと探索者は気付くかもしれない。
それぞれの部屋にSANcポイントを散りばめているが、KPの裁量で不要と思う場合は除外しても構わない。
以下SANcポイントは、◆の印で表示する。()内はSANcによる減少値。
— 部屋 ◆(0/1)
探索者が目を覚ました部屋。ベッドや机、クローゼットなどといった家具が置かれている。
ベランダに続く窓には、カーテンがかかっていて、外の様子を伺う事ができない。
カーテンを開けて様子を見るのであれば、ベランダの先が、夜空よりも深く、暗い闇を探索者は目にする。
<机> ◆(0/1)
3段の引き出し付きの机で、小さな本棚も一緒に付けられている。
一番上の引き出しには鍵穴がついており、鍵がかかっていて、開ける事ができない。
真ん中:探索者が隠し撮りされているアルバムや、探索者のレシートを盗んだ家計簿が入っている。
読んだ場合、行く先どこでも自分は監視されていて、生活形態を把握されているのが分かる。
一番下:探索者の荷物全てがまとめられて入っている。見た感じ、何かされたような形跡はない。
本棚に<目星>または<図書館>に成功すると、似たり寄ったりのジャンルの本の数々の中で、
『モールス信号-入門編-』と『花言葉辞典』の2冊が極めて目立っているのが分かる。
これら2冊は、持ち歩いてもよい。
<クローゼット> ◆(0/1)
開くと見た感じ、ストーカーの私服がハンガーに下げられている。
だが<目星>に成功すると、ストーカーの私服に混じって、
探索者のサイズに合いそうな服が何着か混じっている。
恐らく一緒に暮らしても支障が出ないように、ストーカーが用意したのだろうか。
<ベランダ> ◆(1/1d3)
ナンバー入力式の金庫と、植木鉢がある。
そこから先は闇に包まれていて、どの方向を見ても、闇しかない。
金庫 :4桁の数字を入力できる。現時点では、手掛かりがないので開ける事ができない。
植木鉢:蝿取り草が植えられている。
『花言葉辞典』を読むと、≪魔性の愛≫という花言葉を持っていると分かる。
もしベランダから飛び降りた場合、探索者は途中で意識を失い、先程までいたストーカーの部屋で目を覚ます。
— ダイニング
隅にキッチン台と冷蔵庫があり、椅子とテーブル、ソファーの向かい側にはテレビを乗せた収納台がある。
一人暮らしにしては、清潔な方だ。
<キッチン台>
念入りに掃除しているのか、シンクに水垢が付いていない。
<目星>に成功すると、キッチン台の下の収納スペースに、あるはずの調理器具がなく、
一本のみのフォークとコップしか見つからない。異様に生活感がない。
<冷蔵庫>
探索者に冷蔵庫を開ける前にKPは、
扉に「ケーキ 〇〇(探索者の名前)へ」というメモが貼りつけられているとやんわりと教える。
中には、適当な飲み物とメモの通り、一切れのケーキの乗った皿が入っている。
これらは食べても、飲んでも、害はない。
これはPLが、薬か何かを入れているのではないかと疑わせるためのトラップである。
食べるか食べないか、飲むか飲まないか、どうするかは探索者の意思に任せる。
<テーブル>
テーブルの上には、リモコンと一輪の花の活けられた花瓶がある。
リモコン :異様に軽く感じる。電池の入っているはずの箇所を確かめてみると、
電池の代わりに丸められたメモが入っている。
書かれているのは、点と横棒のみといった、暗号のようなもの。
<知識>成功、あるいはPLのリアル知識が成功した場合、モールス信号だと分かる。
『モールス信号-入門編-』と読み比べる事により、0280という四桁の数字を解読できる。
これはPLのリアル知識で、そのまま解読してしまっても構わない。
この数字で、部屋のベランダの金庫を開けられる。
(開けた場合の詳しい内容は、脱出方法②を参照)
花瓶 ◆(0/1):薄紫の小さな一輪の花が活けられている。『花言葉辞典』を読むと、
この花は錨草で、≪死んでも離さない≫という恐ろしい花言葉を持っている。
今の状況と少なからず一致していると、探索者は恐怖におののく。
さらに辞典のページと見比べる事により、辞典の中の錨草は黄色で、
一つの茎に複数の花が集まっていて、花瓶の花と若干違うのに気付く。
活けられている錨草の茎を調べると、不自然に切り取られた跡が見える。
<テレビ>
薄型テレビ。不思議な事に、ケーブルを繋いでいるのにも関わらず、本体の電源を入れてもつかない。
探索時のロールにファンブルを出した場合、勝手につき、神話生物の映像が流れて、
探索者を驚かせるといった仕掛けをすると、面白くなるかもしれない。
— 洗面所
清潔感があり、鏡の裏に収納できるスペースがある。
洗濯機があり、その傍にユニットバスへ繋ぐ戸がある。
<鏡>
この時点で、探索者は全ての拘束具を外しているのかもしれない。
首輪をつけている場合は<目星>を振らせ、首元にチョーカーを付けられているのを気付かせる。
外せるが、調べる際に<聞き耳>に成功すると、チョーカーに何か入っているような違和感に気付く。
カッターナイフで中身を取り出すと、機械のパーツのようない小さなチップが入っている。
<知識>あるいは<アイデア>に成功すると、GPSだと分かる。
これを捨てるも、そのままにするのも、探索者次第だが、
この選択によってエンドが分岐されるので、KPは忘れないように注意しておく。
<収納> ◆(0/1)
歯ブラシなど、身嗜みを整える物が置かれている。
<目星>に成功すると、ストーカーの使われていると思わしき物の隣に、
新品の歯ブラシやコップが置かれているのが分かる。どうやらここまで入念に準備を整えていたようだ。
思わず探索者は、ストーカーとの望まない生活を想像してしまう。
<洗濯機>
洗濯物が全く入っていない。傍にある洗濯カゴの中も、何も入っていない。
— ユニットバス
トイレと風呂が一緒になっている。とても清潔感がある。
洗面所の鏡を調べていない場合は、ここの鏡で<目星>を振らせて、GPS付きチョーカーの存在に気付かせる。
<トイレ>
特になし。綺麗に掃除されている。
<浴槽>
水が張られていない。蛇口を捻ると、水またはお湯が出る。
<鏡周辺> ◆(0/1)
シャンプーやリンス、ボディーソープなどが置かれている収納棚がある。
NPCと探索者が異性同士の場合、男性ものと女性ものがぴったり寄りそうように、置かれている。
探索者はストーカーとの入浴シーンを想像し、寒気を覚える。
— 空き部屋
窓はなく、四方が壁に囲まれている。家具も何も置かれていない。
<目星>に成功すると、床の隅に床下収納のハッチを見つける。
だが鍵がかかっているため、開けられない。
— 玄関
下駄箱と外に通じる扉がある。
<下駄箱> ◆(0/1)
探索者の靴が綺麗に揃えられて、置かれているのが見つかる。
<目星>に成功すると、履き慣れていて多少あるはずの汚れが、全くない綺麗な状態になっているのが分かる。
ここまで用意周到なのかと探索者は、冷や汗をかく。
<扉>
ストーカーが外出しているため、開かない。
<目星>に成功すると、探索者がいる側は内側なのに、何故か鍵穴があるのが見える。
《サンプルMAP画像》
— イベント発生
一通り探索している時に突如、ノイズのような音が走る。
その後<聞き耳>に成功した場合、玄関の扉の傍まで近づく足音が聞こえる。
失敗した場合は、足音には気付けないが、扉の方からガチャガチャと、
まるで鍵をさそうとしても、鍵穴に中々入らず、手こずっているような物音が聞こえる。
どうやらストーカーが家に帰ってきたようだ、とPLにどこかの部屋へ隠れて、やり過ごすように誘導をかける。
鉢合わせしようとする場合、現在、拘束具を全て外した状態で、家をうろついていると状況を確認させる。
そしてストーカーが、そんな状態の貴方を見たらどう思うかを問い、少し強めの誘導をかける。
それでも隠れようとしない場合は、扉のガチャガチャ音が止み、ストーカーが家から離れていったのを伝える。
<聞き耳>成功で、ストーカーの独り言が聞こえ、忘れ物をしたと勘違いして家まで戻ってきたのを知る。
探索者が隠れた後に、ストーカーが探索者を拘束した部屋に入るかどうか、秘匿ダイスでロールをする。(確率25%)
失敗した場合は、適当な部屋に行かせた後に家を出るような足音が聞こえる。
成功した場合は、<聞き耳>成功で、ストーカーが動揺を隠せずにいて、息遣いが荒くなっている事から、
ストーカーの精神が不安定な状態になっているのが、理解できる。
八つ当たりするように部屋の家具を倒したりして、部屋を荒らすもよし。
隠れている探索者に恐怖を与えた後に、家を出るような足音が聞こえたとKPは伝える。
不安定な精神状態なので、もしかしたら乱暴に歩く足音が聞こえるのかもしれない。
ストーカーが家を出た後に廊下を出ると、床に机の鍵が落ちているのが見える。
私室に戻り、一番上の引き出しの鍵穴にさすと、中には日記帳と小さな鍵が入っている。
日記帳には、探索者への異常な程の熱い想いが綴られていて、ここまで自分は想われているのかと考えると同時に、
どうしてこのような形になってしまったのかと頭を抱える。(SANc 0/1d3)
小さな鍵は、空き部屋の床下収納ハッチに使用できる。開けると、まるで地下室へ続くような階段が見える。
尚、このイベントの細かいタイミングは、KPの裁量に任せる。
— 地下室での探索
階段を降りると、壁がコンクリートの地下室に着く。
二手に分かれている通路があり、片方の通路の奥には、木製の扉がある。
そして探索者の目線より少し上、壁の隅に通気ダクトが見えるが、
こちら側からは蓋を開けて入るのは困難なため、奥の地下室へ行く必要がある。
— 奥の地下室
壁際には、3段に重ねられた新品のマットレスがあり、
探索者の目線の少し上には、通路側の壁に通気ダクトがある。
マットレスを引き摺って、ダクトまで引き寄せれば、登って入れる。
ダクトは一方通行のようで、入り口前の地下室に繋がっている。
— 小部屋
扉の前に<聞き耳>をすると、動物のような気配がする。
クリティカルの場合、今まで嗅いだ事のない嫌悪感のする匂いが微かにする。
そのまま入ると、部屋の奥には、目や口や触肢などを生やした、玉虫色の大きな塊の怪物が、
探索者の視界いっぱいに広がり、「てけり・り!」と甲高い声のような音が、脳に響かせるように、耳に入る。
この玉虫色の怪物——ショゴスを間近に見た探索者は、1d6/1d20のSANcを受ける。
だが探索者が様子を伺っても、ショゴスは襲う様子はない。
<目星>に成功すると、奥がガラスのショーウィンドウで仕切られていて、閉じ込められているのに気付く。
探索者がどう煽っても、このショゴスはショーウィンドウを割って、襲う事はあまりない。
あまりにも酷い時は、ショーウィンドウに罅を入れさせて、驚かせる。
部屋を詳しく調べると、手のひらサイズの小さな木箱が床に置かれていて、
開けるには、ちょっとした謎解きが必要になる。
<木箱>
一輪の小さな花の彫刻絵が施され、その下に薄紫・白・黄色の三色のボタンがあり、
そのまた下に木箱と同じ色の四角いボタンがある。
これは、ダイニングのテーブルの上に置かれていた、花瓶に活けている錨草が鍵となる。
錨草の色は薄紫なので、薄紫のボタンを押し、その次に四角いボタンを押すと、
箱が開き、中から玄関の鍵が手に入る。
(四角いボタンは、ただの決定ボタンなので、深く考える必要はない)
— 脱出方法
① 地下室の部屋にある木箱から、玄関の鍵を手に入れ、地下室の入り口へ戻ると、
人間の肉片のような大きな塊が、空き部屋に繋がる階段から、転げ落ちてくる。
探索者に気付くなり、敵意を剥き出しにして、襲いかかる。
肉片のような大きな塊――原ショゴス(マレモンP.45)を目撃した探索者は、1/1d10のSANcを受ける。
——描写例
それは、肉塊と表現すればいいのだろうか。
人間の手のようなものが、人間の足のようなものが、浮いては、沈み。浮いては、沈み。
さらに人間の顔のようなものが、複数の顔のようなものが、浮いては、沈む。
「あつい」「くるしい」「おうちにかえりたい」「おとうさん、おかあさん」
それぞれ異なった言葉を紡ぐ中、ふと1つの顔が、貴方へと振り向く。
それを始めとし、また1つ、また1つ、顔が、貴方の方へと向く。
そして、全ての顔がこちらを振り向いた時に、こう口揃えて言った。
「 た す け て 」——
これ以降、探索者が家から脱出するまで、原ショゴスは動きが遅くても、追い続ける。
玄関の扉を開けて脱出する際に、「やり残した事はありませんか?」と問いかけよう。
これはエンドに関わるGPS付きチョーカーを捨てないまま持っていた場合の、救済処置。
既に捨てていた、あるいはGPSのみ外したとしても、同様の確認を取る。
戸惑って考え込む間に、原ショゴスは、探索者を追いつめてくるので、KPはその旨を伝えておく。
どうしても家から出る気配がなく、且つ地下室にショゴスがいるのであれば、
ショゴスも探索者を追うために小部屋を出させて、PLを焦らせる。
探索者が家から脱出した場合、エンド一覧へ進む。
② ベランダの金庫のパスワードを入力して開けると、
呪文≪門の創造≫(ルルブP.289)について書かれている、一枚のレポート用紙がある。
読むと習得できるが、冒涜的な知識なので、頭の中に捻じ込まれるような不快な感覚を覚える。(SANc 1/1d4)
今シナリオでの≪門の創造≫は、国内であれば何処でも可能。
だが創るのにPOW1を永久消費し、さらに門を通るのにPOW1永久消費する。
諸注意に記載されている、後遺症によるステータス減少は、このためである。
この脱出方法を取る際も、「やり残したことはありませんか?」と問いかけよう。
脱出方法①に記載したのと同様の理由で、PLへの救済処置として確認を取らせる。
≪門の創造≫でPOWを計2永久消費させて、探索者の自宅前まで繋げて帰ると、エンド一覧へ。
— エンド一覧
脱出方法問わず、GPS付きチョーカーをそのまま持って帰ったか、捨てて帰ったかで、エンドは変わる。
— ハッピーエンド
GPS付きチョーカーを捨てて帰った。あるいは、GPSを外してから帰った場合。
家に帰った翌日、ストーカーが放火事件の被害を受けて死亡したニュースが流れる。
探索者は、戸惑いを隠せなかったが、次第に日常へ戻っていく事でしょう。
— バッドエンド
そのままGPS付きチョーカーを持って帰った場合。
家に帰った翌日、郵便受けに宛先のない手紙が入っているのに気付く。
読んでみると、ストーカーが書いたものであろう内容が綴られていた。
「プレゼントを持って帰ってくれて、ありがとう。これからも、ずっと見守るね。」
直接会って被害を受ける事はないが、今後もストーカーに監視され続けるでしょう。
— シナリオ報酬
1d6 ストーカーの家から生還
1d8 冷蔵庫の中のケーキを食べた
1d8 冷蔵庫の中の飲み物を飲んだ
1d6 ≪門の創造≫で自宅へ帰った
1d10 ファンブルイベントを起こした
クトゥルフ神話4% 進呈
— 補足
— NPCについて
細かいステータスや技能は、特に決める必要はない。
APP高めにして、美男美女のヤンデレにしてもよし。敢えて低めのAPPにして、サイコパスを匂わせるのもよし。
KPの自由である。性別に関しては、PLの許容範囲であれば、同性にしても構わない。
年齢は探索者の歳と近くすれば、同級生や先輩後輩など、接点を持たせやすい。
PLの許容範囲内で、KPの好みのヤンデレを演じてみよう。
だが、中にはそれを難しく思うだろう。そんな時のサンプルがこちら。
その後に記載されている、日記の参考資料と合わせて使うとKPもシナリオを回しやすくなるかもしれない。
<NPCサンプル>
畔見 千暁(くろみ ちあき) 性別:男 年齢:22 職業:大学生
STR:11 CON:10 POW:11 DEX:11 APP:指定なし SIZ:13 INT:11 EDU:18
SAN:25 HP:12 MP:11 DB:±0
-背景
大学に通っていて、最近不眠が悩みで、カウンセリングを受けている。
懸命に通院したが、効果は見られず、むしろ悪化していく一方だった。
黒原 美穂(くろはら みほ) 性別:女 年齢:24 職業:会社員
STR:10 CON:4 POW:11 DEX:10 APP:指定なし SIZ:11 INT:11 EDU:14
SAN:25 HP:8 MP:11 DB:±0
-背景
中小企業の事務をしている。探索者とは、かつての同級生、または親戚か知り合いかもしれない。
以前探索者に片思いをしていて、数年経ったある日、ふとしたきっかけで再び熱が入る。
-共通事項-
探索者に何かしらの面識。あるいは接点があり、想いを寄せている。
だがその想いは歪なため、客観的に見ればヤンデレの部類に入る。
— 日記の参考資料
基本探索者の設定によって、NPCの日記も合わせると、さらに楽しめる。
いくつかの参考資料を載せる。
<資料1>
〇月×日
カウンセリングに、通い始めた。
■■(探索者の名前)先生という方がとても良い人だと評判だから行ってみたけど…凄く良い人だった。
こんなに僕のために、真摯になってくれる人が世の中に、しかも身近にいるんだ。
〇月×日
何だろう…胸が苦しいな。先生とお話するだけなのに、胸がドキドキする。
これ…きっと恋だ。まさか先生に、恋しちゃうなんて。
〇月×日
先生先生先生先生先生先生先生。
ここ最近忙しくて通院する暇がない…
先生の顔見ないと、先生の声を聴かないと、僕は駄目になってしまう。
学校…サボろうにもサボれないし、どうしよ…
〇月×日
友人がとびっきりのおまじないを教えてくれるとか、言ってきた。
どうやら神様の使いにお願いをすれば、願いが叶うんだとか。
気休めにやってみてよと勧めたけど…本当にそんなの効くの?
とりあえず最近忙しくて、先生に会う時間はないから…やってみよ。
〇月×日
やっと先生に会えた。先生。先生。ああ、何て美しいんだろう。
このまま僕と一緒に暮らすんだ。ああ。先生…いいえ、■■さん。
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日記の内容の解説
この日記の中の探索者(男性)は、精神科医を勤めていて、NPCはカウンセリングを受けていた。
だが探索者に恋心を抱き、次第にエスカレートしていく。
膨れ上がる欲望に苛まれていた時に、友人からアルスカリの召喚方法を知る。
勿論友人は、諸悪の根源である、ニャルラトホテプ。どのような形で知り合ったかは、想像に任せる。
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<資料2>
〇月×日
久しぶりに友達に会った。相変わらず、私に会う度に頭を撫でてくる。
カフェ行って、色々お話をしている時に、■■(探索者の名前)先輩の話が出てきた。
先輩、元気にしているかな。いつかまた、会えるといいなぁ。
〇月×日
彼氏ができた。好きじゃないけど、告白されたから、付き合う事にした。
髪色を見ると、先輩を思い出す。…会いたい。元気にしているかな。
〇月×日
初めてデートに行った。色んな所で遊んだけど、何を話して、何をしたのか、細かい事は覚えていない。
ただ、髪を見ていた。どうしても先輩の事を、思い出してしまう。
一度も忘れた事がない。先輩。
元気にしているかな。会いたいな。先輩。先輩。
〇月×日
彼氏と占いコーナーに行ったら、長年想っていた願いが叶うって、占い師のお姉さんが言ってた。
きっと先輩の事だ。先輩に、会える。
それから帰った後に、占い師のお姉さんに、胡散臭いおまじないを教えて貰った。
何でも神様の使いにお願いをすれば、願いが叶うらしい。
嘘だと思うけど、これをやって気を紛らわせれば、いいな…
試しに、お願いしようかな。
〇月×日
やっと。やっと、先輩に会えた。5年ぐらい経った。相変わらず先輩は、素敵で。
仕事なんかで外に出歩くより、私と一緒に暮らした方がいいよ。面倒見てあげる。
もし怪我なんてしたら、居ても立っても居られなくなる。
今日から、ここで一緒に暮らそうね。先輩。
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日記の内容の解説
NPC(女性)と探索者(男性)は、中学時代の先輩後輩関係。もしくは、高校時代の先輩後輩関係を持っている。
好きだけど、中々告白までに踏み出せなかったNPCは、想いを胸に秘めたまま、5年の歳月が経つ。
久しぶりに会った友人から、探索者の話が出てきた事で、5年前の片思いに、再び熱が入る。
他の人と付き合う事になったNPCだったが、やはり探索者への想いは募るばかりだった。
そんなある日、占い師(ニャルラトホテプ)から、アルスカリの召喚方法を知る事に。
気を紛らわせるために唱えたつもりが、探索者を監禁してしまう。
だが監禁した事実より、5年ぶりに会えた喜びが大きく、歪まされた心で探索者に、愛情を注ぐ。
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ここまで日記の内容を挙げたが、それだけでしか愛情を表現できないとは限らない。
ラブレターなど、探索者への愛を伝えられるものであれば、何でもいい。
異常で、歪で、過剰な(PLの許容範囲を超えない程度の)愛情表現で、探索者共にPLを怖がらせよう。
一から日記を作るのが面倒な場合は、資料を参考にしてみるのもいいかもしれない。
探索者とNPCの関係が日記の参考資料に近い場合は、そのまま使っても構わない。
— ファンブルイベント
一度しか使えないイベント。困った時に使用するとよい。
探索している時にファンブルを出した場合、探索者は突如開いた穴から、地下室へ落ちる。
間取りなどの詳細は、地下室の探索を参照。
三段に重ねられたマットレスの上に落ちるので、落下によるダメージはない。
<聞き耳>に成功すると、ガラスが割れたような大きな物音が聞こえる。
その後、鼻が劈くような嫌悪感のするような匂いがし、「てけり・り」と不思議な鳴き声が聞こえてくる。
ここでKPは制限時間を設けて(ボイセだと5分、テキセだと10分)、地下室から脱出するように誘導をかける。
時間が過ぎると、「てけり・り」の鳴き声の正体——ショゴスと対面し、1d6/1d20のSANcを受ける。
SANcを受けない状態で脱出するには、制限時間内に<目星>成功で通気ダクトを見つけて、
マットレスをダクト前まで引き摺って通れば、空き部屋に繋ぐ階段のある地下空間に着く。
そのまま階段を上れば、脱出可能。
万が一SANcを受けた場合は、DEX×5成功で、ショゴスからの攻撃を受けずに、空き部屋まで逃げられる。
尚このイベントが発生した場合、部屋にあった一番上の引き出しの中身は、日記帳のみ。
再び地下室に行くと、奥の通路の先の部屋の扉が、木片となって散らばっているのが見える。
部屋の中は、ショーウィンドウのガラスの破片が散らばっており、ショゴスの姿はない。
靴下だけ履いている状態、あるいは裸足のまま入るのであれば、DEX×5の判定を振らせる。
失敗すると、足の裏に破片が刺さり、1d4のダメージを負う。
靴を履いている状態の場合、この判定によるダメージはない。
— 最後に
このシナリオは全体的に後味悪いですが、ロストエンドはありません。
比較的、難易度の調節や改変がしやすいシナリオですので、ご自由にどうぞ。
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